映画「ダンケルク」を観た感想

多少のネタバレがあるのでご注意ください。

先週、クリストファー・ノーラン監督の映画「ダンケルク」を観た。第二次世界大戦のフランス・ダンケルクでドイツ軍に包囲されたイギリス・フランス軍の撤退戦を描いた作品だ。小学生の頃から第二次世界大戦をテーマにしたボードゲームをやっていたので、ダンケルクの戦いは知っていたが、普通の人はノルマンディ上陸作戦をかろうじて知っているぐらいだと思うので、この作品を知ったときはクリストファー・ノーラン監督はチャレンジャーだなと思った。

しかし、半年くらい前にトレイラーが公開されたとき、砂浜に整列する兵士がスツーカ爆撃機の迫る音に身を屈めて逃げ惑う映像をみて、この作品がとても面白いものになることを直観した。どこか、今までの戦争映画とは違った視点で描かれるのではないかと期待が膨らんだ。

そして、公開された映画は想像以上の内容だった。これは今までの戦争映画とは明らかに一線を画すものだ。

よくある戦争を題材にした映画では、激しい爆発や破壊のシーン、残酷な描写や、飛び交う銃弾の中をくぐりぬけ、敵兵をなぎ倒したり、仲間をかばって戦死したりする英雄などが描かれることが多かったけど、このダンケルクで描かれるのは敵の攻撃に恐怖し、逃げ隠れる兵士の姿ばかりだ。どの兵士も、ただの人間であって、それ以上の何者でもない。戦場で起こる出来事に巻き込まれるだけなのである。だから作品では一人一人の背景はほとんど描かれない。

作品では、脱出する兵士たち、それを支援する英国空軍のパイロット、そして民間救助船の船員という3つの立場の人間の視点から描かれているのだが、物語の始まりではそれぞれの時間の経過が違う。それが最後にダンケルクで会するときに時間が重なるようになっているのだ。まるで拍子の違う3つのパートが最後に一つの音楽となるように。戦場を舞台にした単なる群像にならないように、緻密な計算でまとめている。

インセプションではパラレルワールドだったし、インターステラーは時間超越をテーマにした内容だった。ノーラン監督の時間や空間の描き方は上手だと思う。

そして、ノーラン監督により淡々描かれる映像を盛り上げるのがハンス・ジマーの音楽だ。シャープで緊迫感が半端ない。どうやらこれは音がいつまでも上がり続けているように聞こえる「無限音階」という手法が使われてためなんだとか。

とにかく、面白かった!これは映画館で観ることをおすすめする。

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