父親たちの星条旗

クリント・イーストウッド監督「父親たちの星条旗」を見てきました。

この映画は太平洋戦争末期にアメリカ軍と日本軍が死闘を繰り広げ、日本軍20,129名、アメリカ軍6,821名の戦死者を出した激戦地である硫黄島の戦闘を題材にしたノンフィクション作品で、アメリカ側の視点で製作した「父親たちの星条旗」と日本側からの視点の「硫黄島からの手紙」の2部構成となっています。

日本の領土である硫黄島に星条旗を掲揚した兵士たちの写真はたちまちニュースとなり、生き残っていた3人が本国に呼び戻されるわけですが、自分たちの意思とは無関係に英雄としてマスメディアに取りあげられ、アメリカの戦費調達の宣伝を担当させられて戸惑い、苦悩します。

帰国した3人の中の一人で衛生下士官「ドク」の息子が原作者のジェイムズ・ブラッドリーなのですが、父親が生前、家族たちに一切語らなかった戦争体験を当時の関係者にインタビューしながらたどっていきます。今までの戦争映画は戦争自体をドラマ化してしまうものが多かったですが、この作品は回想シーンとして淡々と描き、観た人がいろいろと考える余地を与えているように思いました。無理矢理に感動を詰め込むようなことをしなかったのは、クリント・イーストウッドがこの作品を出来るだけ当時のありのままで伝えたいと考えたからではないかと思います。そして、それこそが硫黄島で戦って死んで行った若者たちへのトリビュートなんだと思いました。

この映画の上映後に12月9日より公開される「硫黄島からの手紙」の予告編が上映されたのですが、父親たちの星条旗では姿の見えない恐ろしい敵として描かれていた日本人も、家族や故郷を想う普通の人間として描かれているようです。両方の映画を見て、戦争の不条理というものがより一層伝わるのでしょうね。是非見に行きたいと思います。

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