硫黄島からの手紙

土曜日に「硫黄島からの手紙」を見てきました。

「父親たちの星条旗」と同様に淡々と戦争が描かれてますが、まったく違った雰囲気の映画となっていました。日本人のキャスト、台詞も全て日本語なので当然といえばそうなのですが、やはり日本側には勝機のない悲壮感みたいなものがにじみ出ていたからだと思います。

硫黄島の戦いでは日本の守備隊2万人以上が命を失ったそうですが、当時は故郷に手紙などを出すにしても何処の戦地で戦っているかは教えられないそうで、故郷に残された家族も戦死してはじめて硫黄島にいたことを知るといったことも多かったそうです。そして、今でも硫黄島には1万3千人の遺体が眠っているとのこと。熾烈な状況の中で兵士たち一人一人が何を想い、戦い、散っていったのかを想像すると胸が苦しくなります。

現在の安泰な世の中が、すべて戦争で命を落とした人たちの犠牲の上に成り立っているとは言い切れないけど、その事実を、その存在を決して忘れてはいけないと思いました。

それにしても二宮和也くんの演技が良かったです。
彼にアカデミー賞助演男優賞取ってもらいたいと本気で思った。

父親たちの星条旗

クリント・イーストウッド監督「父親たちの星条旗」を見てきました。

この映画は太平洋戦争末期にアメリカ軍と日本軍が死闘を繰り広げ、日本軍20,129名、アメリカ軍6,821名の戦死者を出した激戦地である硫黄島の戦闘を題材にしたノンフィクション作品で、アメリカ側の視点で製作した「父親たちの星条旗」と日本側からの視点の「硫黄島からの手紙」の2部構成となっています。

日本の領土である硫黄島に星条旗を掲揚した兵士たちの写真はたちまちニュースとなり、生き残っていた3人が本国に呼び戻されるわけですが、自分たちの意思とは無関係に英雄としてマスメディアに取りあげられ、アメリカの戦費調達の宣伝を担当させられて戸惑い、苦悩します。

帰国した3人の中の一人で衛生下士官「ドク」の息子が原作者のジェイムズ・ブラッドリーなのですが、父親が生前、家族たちに一切語らなかった戦争体験を当時の関係者にインタビューしながらたどっていきます。今までの戦争映画は戦争自体をドラマ化してしまうものが多かったですが、この作品は回想シーンとして淡々と描き、観た人がいろいろと考える余地を与えているように思いました。無理矢理に感動を詰め込むようなことをしなかったのは、クリント・イーストウッドがこの作品を出来るだけ当時のありのままで伝えたいと考えたからではないかと思います。そして、それこそが硫黄島で戦って死んで行った若者たちへのトリビュートなんだと思いました。

この映画の上映後に12月9日より公開される「硫黄島からの手紙」の予告編が上映されたのですが、父親たちの星条旗では姿の見えない恐ろしい敵として描かれていた日本人も、家族や故郷を想う普通の人間として描かれているようです。両方の映画を見て、戦争の不条理というものがより一層伝わるのでしょうね。是非見に行きたいと思います。