父の詫び状 – 向田 邦子

「眠る杯」が面白いと言っていたら、妻にプレゼントしてもらいました。向田さんにかかると、何気ない話さえ、本当に面白おかしく仕立てられてしまうから不思議。読者には昭和の日常がリアルかつ、鮮明に思い浮かんでくることでしょう。それにしても向田さんは父親に対する想いは特別のようですね。本人は「眠る杯」にてちょっと書きすぎた・・・。ようなことを後日談として書いていましたが、父親のことを木訥で、粗暴でと言う割に、偉大な父親としてとても尊敬していたのではないかと感じました。そういう家族の等身大の気持がいっぱい詰まっているところも好きです。

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深い河 – 遠藤周作

本屋に立ち寄ったとき、ふと手にとった本ですが深く感動しました。

インドツアーで集う人々。それぞれに他人が想像することも出来ない過去や苦悩があり、その答えを求めるため、過去と決別をするためにガンジス河へ向かうという話。妻に先立たれた男が転生を信じたり、戦争で死生をさまよった男が亡き戦友の法要のためにツアーに参加するなど、様々なエピソードが描かれますが、「真実の愛」という言葉を信じることができず苦悩する美智子という女性と、キリスト教徒でありながら基教的な考え方に迎合できず、教会を追われながらも、ただ普遍的な愛を信じて生きていく、大津という男の生き様が対象的かつ印象的でした。そして、読了後に人間の不条理というものを感じずにはいられません。しかし、それと同時に人間の愛について深く考えさせられます。

自分は特定の宗教を崇拝していません。しかし、因果というか、業というものについて最近深く考えるようになりました。人間の行いが全て結果となって現れる。人間は原因をコントロールすることで結果をコントロールする。因果応報というものでしょうか。それは宗教として当てはめれば、仏教的な考え方なのかもしれませんが、業(カルマ)について深く考えることは単なる信仰心ではなく、一人の人間として大事なことなのかなと思うのです。なぜそのようなことを考えるようになったかは良くわかりませんが、震災後の価値観の変化なのかもしれませんし、両親と先祖や死生観について話をすることが増えたからかもしれません。いずれにしても、内省はまだまだ不肖な自分ですが一度きりの人生、大切に生きて行きたいと思いました。

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眠る盃 – 向田 邦子

また、やっちゃった!

妻の持ってる本と同じものを買ってしまった。作家の好みが似てるからついやってしまうのです。(買う前に確認してよね!と後ろから声がする)また、やってしまったら笑ってください。

さて、最近は向田邦子さんの「眠る盃」を移動中なんかにパラパラと読んでいます。エッセイ集だから中断しやすいのが良いですね。でも、向田さんの作品って小気味よく話が進むものだから、続きをすぐに読みたくなってしまう。

それにしても、高度経済成長期の日本って、いきいきとしているなぁと思います。やはり、戦後の貧困の中から生き抜いてきた人たちは逞しいのでしょうか。それとも、向田さんがそういうタイプなのかもしれないけど。

自分が幼少の頃に聞かされた、祖母や両親の話を思い出しては、当時の日本の情景や、人々の生き様に想い馳せるのであります。

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理想の暮らしが買える店 – Casa BRUTUS

今月号のCasa BRUTUSの特集「理想の暮らしが買える店」がすごく良いですよ。ソニア・パークさんの極上セレクションARTS&SCIENCEとか見ていて溜息でます。その他、自分も好きなプレイマウンテンさんとか、伊勢丹リビングの話とかテンションのあがる記事ばかり。日本全国のショップガイド50店もあって、これは間違いなく永久保存版ですぞ。

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機動戦士ガンダム THE ORIGIN

習慣的に漫画を読まない(所有しているのはワンピースと銀河鉄道999のみ)私なのですが、あのファーストガンダムの雰囲気そのまま醸し出している本作にたまたま本屋で遭遇してしまい、懐かしさのあまり、思わず1巻から14巻までまとめ買いしてしまいました。そして一気に読みきってしまった!やっぱり面白いね、ファーストは。男臭いの大好き。そして、自分にとって漫画とは男の浪漫が描かれていることが重要なのだとあらためて気がついてしまうのであった・・・。

神の子どもたちはみな踊る

阪神淡路大震災をモチーフにした短篇集。書店で並んでいたので何気なく手にとってみた本です。実際に起きた地震をフィクションと絡ませて描いているのですが、どの作品も物語の構成が薄っぺらい気がしないでもない。でも、それが村上春樹なのだと言われるとそうなのかもしれない。そのなかでも「かえるくん、東京を救う」は面白かったと思う。かえるくんは忙しい我々の日常生活のメタファー。現実を逃避すると白昼夢のようなことが起こってしまうのだと。でも、最後はすべてを受け入れることが大切だみたいな話ではありますが。とにかく、かえるくんがいい味出していたのです。

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読書強化週間 – 乳と卵

病院・通院とはなんと退屈なところなんだろう。待っている時間はいろいろと考え事をするので嫌いです。ということで経済やインテリアの雑誌と一緒に、前から気になっていた作家・川上 未映子の本も何冊か購入して時間つぶし。彼女の癖のある関西弁の文章が、女性のリアルを切り取っているかのような赤裸々であり、瑞々しさを感じるー。内容はキャッチーなのでサラサラ(関西弁を読むのはサラサラとは読めないのであるが)と読めると思います。まだ半分ぐらいしか読んでないで感想はのちほど。

ひとり暮らし

谷川さんのエッセイを読むとほっこりとした気持になって元気になります。詩人って言うと孤高で、気難しい人物か、コクトーのようなアーティストで社交的で華やかな人物というイメージを勝手に思い描いているワタシですが、谷川さんはヒューマニズムを感じさせる優しいお爺様なんだと思います。(これも自分の勝手なイメージですが!)かといって世の中に迎合しているわけでもなく、自らの価値観を大切にしているところが犇々と伝わってきます。出すぎないエゴイズムとでもいいましょうか。そこが絶妙で、好きなのです。

フラニーとゾーイ

若い頃はセンシティブだから精神も不安定になりやすいものです。周りの人間をわけも無く嫌悪したり、他人の言葉が何もかも軽々しく感じたり。そして、そんな風に感じてしまう自分が嫌になり自己嫌悪に苛まされる。みんな主人公のフラニーのようになったことがあるはずです。この本のレビューを見ると皆が違う感想を持っているところが面白い。男女の関係、スノッブな人種、エゴイズム、若さ故の苦悩、家族の絆、宗教観、読めば読むほどいろいろなことが見えてくるからだと思う。

ひつじが丘

この物語は人間の愛、罪の深さ、業の深さを描いた傑作。「愛することは、ゆるすこと」 という主人公の父の言葉がすべてを物語っています。人間はいつのときも愛に悩み、翻弄されながらも信じて生きていくしかないのですね。「愛している」という言葉の重さについて深く考えさせられました。